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寂しさに 宿をたち出でて ながむれば いづくも同じ 秋の夕暮れ
嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり
心にも あらで憂き世に 長らへば 恋しかるべき 夜半の月かな
春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たむ 名こそ惜しけれ
もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし
恨みわび 干さぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ
朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木
今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで 言ふよしもがな
夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも よに逢坂の 関は許さじ